本センターに在籍され、2025年3月に修士号を取得して気象庁に就職された松永佳大さん他の論文が出版されました.
内陸の大地震は、地表に活断層が見えなくても発生することがあります(例: 1997年鹿児島県北西部地震、2004年新潟県中越地震、2008年岩手・宮城内陸地震)。このため、内陸の大地震のリスク評価のために、地表の活断層の分布以外の手がかりも見つける必要があります。本研究では、松永佳大さん(現・気象庁)、相澤広記 准教授らの研究グループらが1997年鹿児島県北西部地震※の震源域周辺に多数の観測点を設置して地磁気・地電流を観測しました。先行研究(Umeda et al., 2014, Tectonophysics)の観測データと合わせて解析を行い、震源域地下の比抵抗 (電気の流れにくさ) 構造を高解像度で推定しました。
推定された比抵抗構造と3月の本震(※)のすべり分布(Horikawa, 2001, Bull. Seismol. Soc. Am.)を比較することで、本震の破壊が低比抵抗領域(電気が通りやすい領域)C1の縁で始まり、別の低比抵抗帯C2で停止したと推定しました。このことは、比抵抗構造が大地震の破壊をコントロールする可能性を示唆します。さらに、マグマ由来の流体が本震の破壊開始に関与し、浅部のスメクタイトに富む領域と、その下部の流体が破壊を止めたことを提案しました。本研究で得られた結果は2016年熊本地震での結果 (Aizawa et al., 2021, EPS) と類似しており、比抵抗構造が将来発生する大規模な内陸地震の位置と規模の評価に有用な可能性を示しています。
※:1997年鹿児島県北西部地震では2つの本震が発生しました(3月26日にMw6.1、5月13日にMw6.0)。
Matsunaga K., Aizawa K., Asamori K., Ogawa H., Utsugi M., Yoshimura R., Yamazaki K., Uchida K., Matsushima T., Inoue T., Yonemori K., Shigematsu H. (2025), Three-dimensional resistivity structure and its relationship to the rupture of the 1997 Kagoshima earthquake doublet (Mw. 6.1 and 6.0), Japan, Tectonophysics, 915, 230880.
https://doi.org/10.1016/j.tecto.2025.230880
謝辞
観測にあたり、観測地点での調査をご快諾いただいた土地所有者の皆様に心より感謝申し上げます。2024年の観測には奥田 祐大氏、砂川 尋海氏、また2016年の観測には塚島 祐子氏、山本 有人氏、小松 信太朗氏、武石 貢佑氏、渡部 陽奈氏、藤森 佳奈氏、緒方 美季氏、岩崎 雅氏、宮野 幹大氏にご協力いただきました。解析に用いた地磁気データの一部は、気象庁地磁気観測所よりご提供いただきました。Umeda et al. (2014) による広帯域MT (Magnetotellurics) データは日本原子力研究開発機構(JAEA)よりご提供頂きました。本研究は、文部科学省の第二次・第三次地震火山噴火予知研究計画(地震火山防災研究)、ならびに東京大学地震研究所共同利用プログラムの支援を受けて実施されました。以上に記して御礼申し上げます。

鹿児島県北西部での観測点設置風景

比抵抗構造の鉛直断面図 (3月の本震の断層面に沿う) と3月の本震のすべり分布 (黒いコンター、数字はすべり量[m])
