当センターは、中部九州を横断している別府-島原地溝帯、その南西に連なる沖縄トラフの1セグメントである天草灘地溝の南北拡張現象にともなった構造性地震や地殻変動の観測による内陸型地震の予知研究、ならびに雲仙火山を対象とした火山活動の観測を通じ、火山現象の基礎的研究や、火山活動度の評価あるいは火山噴火予知の研究を行なっている。ことに雲仙火山は、別府-島原地溝帯と沖縄トラフの会合点という西南日本における地質構造上の特異な位置にあり、その活動は、これらの造構運動と密接な関係を有しているものと思われ、地震・火山両分野にわたる総合的な研究には最適の地である。
地震観測
地震は、地殻の破壊現象であるが、その観測は地震予知ならびに火山噴火予知研究の基本となるものである。当センターは、常時観測設備として、九州中・北部地域広域地震観測網16点、雲仙火山地域地震観測網9点を保有し、テレメータによるリアルタイム連続観測を行なっている。
この地震観測テレメ-タシステムは、まず4点が、第1、2次火山噴火予知計画(昭和49-58年度)の一環として整備されたもので、それらは、噴火時に想定される雲仙火山西側の千々石カルデラから有史後の噴火地点である主峰普賢岳へのマグマの移動を把握する目的で、これらを取り囲むように配置している。その後は、第5次地震予知計画(昭和59-63年度)に受け継ぎ、地震頻発地帯である天草灘地溝ならびに島原-熊本地溝を対象とした計11点観測網へと拡大された。さらに、第6、7次地震予知計画(平成元-10年度)では、九州中・北部全域を対象とした観測網への拡張が図られ、現在計16地震観測点による常時観測を行なっている。
各地観測点からのデ-タ信号は、NTT専用回線(D1規格)による有線テレメ-タ方式によって、当センターへ搬送され、長時間ペンレコ-ダによってモニタ-している。さらに、平成4年度には地震データ自動処理装置の導入により、地震の自動震源決定処理を行い、迅速な地震発生状況の把握がなされている。
地殻変動観測
別府-島原地溝帯に雁行配列しているものと推定されている中軸の1つが、島原半島の中央部を横断している雲仙地溝である。現在も、年間 2-3mmの速度で沈降をつづけている。また、西側の千々石湾も、南南西に連なる天草灘地溝との会合点にあたり、二重に沈降して扇状地溝を形成しているものと推定されている。
これらの地殻変動の実態を把握するため、水準点と光波測量用基点を設置し、他大学観測機関の協力をえて、1986年(昭和61年)に島原半島において第1回の測量が行なわれた。奇しくも、1990年に198年ぶりに雲仙岳が噴火活動を開始したため、その後再測が実施され、火山噴火予知研究に関わる多くの成果が得られている。
一方、雲仙岳の噴火活動に伴う常時地殻変動観測施設の整備も図られ、平成4年度、火山周辺に4ケ所のボアホール型傾斜計が設置された。またGPS観測装置の導入により、九州広域地殻変動観測にも着手している。