別府―由布院地下の流体上昇経路

相澤准教授、2019年3月に修士号を取得し卒業された山本有人さん他の論文が出版されました.

温泉で有名な大分県の別府や由布院の周辺は、とても活動的な地域です。地表には伽藍岳、鶴見岳、由布岳という3つの活火山と、東西方向に伸びる断層が数多く存在します。地震活動も活発で、2007年には別府湾の地下10 km付近から、鶴見岳方向の深さ3 kmへと震源が移動する群発地震が発生しました。また、2016年4月16日の熊本地震の地震波がこの地域を通過する際は、M5.9の地震が由布院地下で誘発されたことも分かっています。深さ17~32 kmでは活火山に対応すると考えられる深部低周波地震活動もみられます。さらにGNSS観測による地表のせん断変形が九州で最も顕著な地域でもあります。なぜこの地域が活動的なのか、どのように別府温泉や由布院温泉が形成されているかを理解するために、流体の存在に敏感な比抵抗 (電気の流れにくさ) 構造を推定するための広帯域MT探査を別府市周辺の161カ所で行いました。その結果3つの活火山に取り囲まれるように柱状の良導体 (電気を流しやすい領域; 下図のC1領域) がイメージングされました。地下構造から推定した主な結論は、以下のとおりです。

1.良導体の端部を火山性流体が上昇する。火山性流体は主に北側深部から供給され、地震活動に寄与している。

2.別府湾地下の堆積層の下部をなぞるように上昇する別の流体供給路が存在する。この経路の流体上昇は間欠的で、しばしば群発地震を引き起こす。

3.以上の2つの経路が地表付近で合流し、別府や由布院の温泉が形成される。

比抵抗構造からは、伽藍岳と、由布-鶴見岳で、顕著な違いが見られました (下図参照)。伽藍岳地下のほうが柱状の良導体の深さが浅く、電気をより流しやすくなっています。伽藍岳から別府北部にかけては、火山性流体の上昇がより顕著であることを意味しているかもしれません。

本研究は、2024年9月に別府市で開催された第26回 Induction workshopの特集号の一部としてEPS誌に出版されました。

Aizawa K., Yamamoto Y., Wakabayashi A., Muramatsu D., Aniya S., Tanabe H., Fujita S., Azusa S., Koyama T., Shiozaki I., Ichiki M., Three-dimensional resistivity structure beneath Beppu and Yufuin geothermal fields imaged by dense broad-band magnetotelluric observations, submitted to Earth Planets Space.
https://earth-planets-space.springeropen.com/articles/10.1186/s40623-025-02291-w

観測風景:MT探査は通常、人工ノイズを避けた人気のないところで実施しますが、今回は浅部の温泉の流動経路の推定も目的とし、別府市内の小中学校のグラウンドで一晩だけ電場の測定をさせていただきました。

比抵抗構造の東西断面図:矢印は推定した火山性流体の流動経路を表しています (白矢印は群発地震発生時に特に活発になる経路)。地下構造の特徴として、由布岳、鶴見岳地下に比べ、伽藍岳地下のほうがより電気を流しやすく、その深さも浅くなっています。これは火山ごとの流体の上昇のしやすさを反映しているのかもしれません。