「地域防災の要として、真に必要とされる情報を提供」 (人事院月報、96年1月号)

1月 22, 1996
人事院総裁賞受賞記念(1995年12月)
後列:松島、福井、内田、馬越
前列:松尾、太田、清水

受賞の感想をお聞かせ下さい
 今回の雲仙・普賢岳の噴火では,他大学や気象庁,自衛隊など多くの機関が,精力的に観測にあたりましたが,当観測所のみが受賞の栄に浴し,申し訳ない気持ちでいっぱいです.

今回の噴火後,より有効な情報を地域に提供するために留意したことはありますか

 今回の噴火では,大学と陸上自衛隊が一心同体となって相互の機能を高め,真に役立つ火山監視体制を構築するように留意し,危機管理にあたる地方自治体,警察,消防機関を支援してきました.

観測活動を行うにあたっては色々とご苦労があったと思いますが.

 噴火では,度重なる火砕流災害が発生しましたが,この発生予測を行うため,観測陣としては,溶岩ドームの観察と至近距離での地震観測が不可欠でした.ところが,地震計は,噴石や火砕流,雪,野生生物により度々壊されましたので,これらの維持管理に苦労しました.また,噴火が始まって5カ月目に,山頂部の地震計の交換用バッテリーを消防署員の協力を得て担ぎ上げていたとき,目的の火口縁到着直前に大爆発が起き,運よく死を免れたこともあります.その後も,所員は数々の危険に直面しながら観測を行いました.

研究上の成果,研究者としてのやりがいもあったのではないかと思いますが.

 神秘的な火山現象を推理しながら,ひとつひとつ科学的に解明していくことは,火山研究者にとっては最大の魅力です.たまたま数千年に一度という大噴火に遭遇しましたが,多くの火山観測機関のご協力を得て,多数の貴重なデータを蓄積できました.今後はそれらを総合的に解析し,少しでも火山学の進歩に役立てなければと考えています.

今回の観測,防災活動を通じて,学んだことや今後に生かしたいことはありますか.

 地震学,火山学は,飛躍的に進歩しています.しかし,地震予知,火山噴火予知に対する社会的期待とは大きな隔たりがあります.研究者は,それぞれの研究成果を防災に生かすことをもう少し真剣に考えなければならないと思います.