平成14年1月10日10時00分
雲仙岳測候所発表
火山名:雲仙岳
1 概況
12月の雲仙岳の火山活動は、火山性地震の発生が14回(前月5回)とやや増えましたが、全般的に落ち着いた状態が続きました。
平成新山(溶岩ドーム)の現地観測でも、溶岩ドームの形状や噴気地帯の状況には、ほとんど変化は見られませんでした。
また、落石震動も観測されませんでした。
噴煙も少ない状態で、表面活動にもほとんど変化は見られませんでした。また、光波測量観測、温泉観測の結果にもほとんど変化は見られませんでした。
1月に入ってからも、火山活動は落ち着いた状態です。
2 震動観測
12月の火山性地震、火山性微動、火砕流と思われる震動波形及び落石震動の発生回数は第1表のとおりです。
|
|
|
|
|||
|
|
|
|
|||
上旬 |
|
|
|
|
|
|
中旬 |
|
|
|
|
|
|
下旬 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
(1) 火山生地震
12月の火山性地震はA点で14回観測しました。これは、橘湾と島原半島南西部を震源とする比較的深い地震(A型地震)が8回で、平成新山の直下を震源とする比較的浅い地震(B型地震)が6回でした。山体に最も近いE点では16回観測しました。有感地震の発生はありませんでした。
1月に入ってからは、9日までに火山性地震は観測されていません。
(2) 火山性微動
12月は、火山性微動は観測されませんでした。
1月に入ってからは、9日までに火山性微動は観測されていません。
(3) 落石震動
12月は、落石震動は観測されませんでした。
1月に入ってからは、9日までに落石震動は観測されていません。
3 遠望観測
遠望カメラによる観測
12月の遠望観測による噴煙はすべて白色少量で、噴煙の高さは10~100mの状態で推移しました。
1月に入ってからも、9日までに噴煙量等に特に変化はありません。
4 現地観測
(1) ドーム観測
溶岩ドーム(平成新山)の現地観測を、12月5日に実施しました。
恐竜の背中状溶岩塊の形状及び観測地点の噴気量、臭気、温度の観測値は前回(9月18日)と比べて特に大きな変化はありませんでした。
なお、溶岩ドームで最も温度の高かった場所での温度は374℃あり、依然高温を保っていました。
(2) 温泉観測
雲仙地獄、小浜温泉の現地観測を12月14日に実施しました。
観測値に前回(10月12日)と比べて大きな変化はありませんでした。
観測結果を第2表に示す。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
5 地殻変形観測
(1) 傾斜計による観測結果
12月は、傾斜変動は観測されませんでした。
1月に入っても9日までに、傾斜変動は観測されていません。
(2) 光波測量観測結果
気象庁と経済産業省産業技術総合研究所地質調査所で行っている光波測量によると、普賢岳山体につけた反射鏡との斜距離は、前回とほとんど変化はありませんでした。
6 その他
雲仙岳の2001年の月別観測資料は第3表のとおりです。
表の用語の解説
【火山性地震】
火山体およびその周辺で局所的に発生し、地下の火山活動に随伴して発生する地震を通常の地震と区別し火山性地震としている。雲仙岳では地震計によって得られる地震波形の形状や発生する地域等から、火山性地震を主に3つのタイプに分類している。
(1)A型地震
地震波形の相(P波・S波)の始まりが明瞭で、振動の周期が短く、発現時に噴火・噴煙等の火山現象は伴わない。雲仙岳では、主に橘湾や島原半島の山体周辺の比較的深い所で発生が見られる。
(2)B型地震
A型地震に比較して相の始まりが不明瞭で、震源も山体直下の比較的浅い所で発生が見られる。
(3)爆発地震
爆発的噴火と同時に発生する地震。
なお、第3表では火山性地震により雲仙岳測候所で震度1以上となった有感地震を計数しており、通常の有感地震と区別している。
【火山性微動】
地下の火山活動に起因して発生する火山性地震以外の振動で、震動波形の立ち上がりがあまり明瞭でなく、継続時間の長さ、振幅、周期などがそれぞれ異なり非常に多様である。火山性微動は火山性地震が連続して発生するような場合、噴火時に火山灰などの噴出活動と連動して発生する場合、火山体内におけるマグマや火山ガスの運動に伴って発生する場合、マグマや火山ガスと地下水との相互作用により発生する場合などが考えられている。
【傾斜変動】
火山活動に起因して火山体や周辺の地殻が隆起や沈降したりする。
雲仙岳測候所では傾斜計により地面の傾斜変化を計測している。
【火砕流】
高温の火山ガス・火山灰・れき・岩塊などに空気が混合し、毎秒数mから数十mの高速で流下する現象で、温度は数百℃以上に達する。雲仙岳の噴火では、1991年5月に山体頂部の火口から溶岩が噴出し、溶岩の成長と崩落に伴い多くの火砕流が発生した。雲仙岳測候所では、溶岩の崩落に伴う震動波形でE点(薊谷)の地震計における震動波形が30秒以上継続して振り切れた場合を「火砕流と思われる震動波形」として計数している。
【落石】
溶岩の供給が停止した1995年2月以降、噴出した溶岩ドームは時間の経過に伴い風化している。1995年3月以降は、火砕流を除き崩落は溶岩ドームの不安定部分が落ちているということで「落石震動」として、地震計の震動波形により計数している。
【土石流】
土石や岩片などが地下水または地表水によって、泥水状になって流動化し高速で流下する現象。特に山崩れによって直接生ずる土石流を山津波という。
雲仙岳測候所では、土石流が発生した場合地震計にその振動が記録されることがあり、C点(岩床山)の地震計でその発生を計数している。
【噴煙】
遠望監視カメラにより、噴煙の状態(色・量・高さ・流向)を観測している。表3では月の最も高った噴煙の高さ、色を記載している。
【火山情報】
気象庁は火山活動に異常が生じた場合や重大な火山災害が発生、または発生する可能性がある場合、また、定期的に火山活動の状況について防災に役立てるために情報を発表している。情報には次の4種類がある。
(1)定期火山情報
毎月10日に前回発表以後の火山活動の状況について発表する。
(2)臨時火山情報
火山活動に異常が発生し、防災上注意が必要な時に随時発表する。
(3)緊急火山情報
火山活動により、生命、身体に関わる重大な被害が発生または発生する可能性がある場合に発表する。
(4)火山観測情報
緊急火山情報、臨時火山情報を補うなど火山活動の状況をきめ細かく発表する。
|
|
|
||||||||||||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
||
地震回数 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
震度別回数 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
微動 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
噴煙 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
火山情報 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|